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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(オ)775号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告代理人平岩忠次郎の上告理由第二点について。

所論は、上告人等は、被上告人等を上告人の所有山林と相隣関係にある山林、高山市中切字小羽田一八八九番の所有者として本件境界確定の訴を提起したものであるところ、その所有者であつた被上告人等は右山林を昭和二七年九月二〇日訴外中切神社に譲渡し、右訴外人は原審における口頭弁論終結前である昭和二七年一〇月三一日その所有権移転登記手続を完了したという事実を前提として、上告人等と被上告人等とは相隣地の所有者の関係を有せず従つて原判決には境界確定訴訟の要件の欠缺を看過した違法があると主張するものと認められるが、所論のような事実は、上告人等が原審において少しも主張しなかつたところであるのみならず、前記山林が被上告人等の所有に属しかつ上告人の所有山林と相隣関係にあることは、原審の口頭弁論終結に至るまで、当事者間に争がなかつたところである。そしてかかる場合裁判所が土地境界確定訴訟における所論の要件に欠けるところなしとして審理判断することはなんら違法ではない。従つて所論は理由がない。

その他の所論は、要するに原審の証拠の採否ないし事実認定の是非を争うに過ぎず、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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